<< 映画の中のワイン・第95章 >>
六本木クラブチックソムリエ 平野 光志
お久しぶりです!六本木クラブチックの平野です。
長い間お休みをしていましたが、またこのソムリエ通信に寄稿させていただきますのでよろしくお願いします。
さて、再開初回の作品は、「PERFECT DAYS」。
この映画はドイツの名匠ヴィム・ヴェンダースと日本を代表する俳優である役所広司の美しきセッション。
フィクションの存在をドキュメントのように追います。
海外の批評家やメディアの間では、ヴェンダースの最高傑作との呼び声も高く、第76回カンヌ国際映画祭にて役所広司は19年ぶりの日本人受賞となる最優秀男優賞を受賞しました。
世界各国で「ZEN MOVIE」とも評されました。世界86ヶ国での公開も決定しています。
この映画にワインは出てきません。焼酎だと思われる飲み物なら出てきますが。(笑)
この主人公、平山にとっては今の日常に余計なものはいらないのです。
でもそれがまた観ている側の私からするとぜひロマネ・コンティを一口飲んでもらいたい。
美味しい、美味しくないではなく、ここにロマネ・コンティがあり、ただそれを一口飲んでいるだけ。これを想像した時に私は涙が出てきそうになりました。
映画の宣伝マンではありませんが、それほどの映画です。(笑)
先日、お客様と色々とワインのお話をさせて頂いた時、毎年自分のバースデーと大切な方のためにだけロマネ・コンティを開けて飲むという方とお話しを聞く機会がありました。
最近では82年物のロマネ・コンティを飲まれたそうです。
82年は天候に恵まれた年なので、9120本が瓶詰めされました。(83年以降のロマネコンティの瓶詰めは6000本前後になっています。)
私も2006年に当店で82年物を開けさせていただき、一口頂いたことがありました。あまりにも完成度が高すぎて、ワインでありながら「水の如くさわりなく」飲めてしまうほどでした。
この映画を観ていて、うちに千万無量の複雑性を蔵しながら、さりげない姿がその時のワインのある情景を思い出させてくれました。改めて、この映画の宣伝マンではないことは強調させていただきます。(笑)
またどなたか開けてくださる方を待ちながら六本木クラブチックで今日も楽しくワインと向き合っていきます。