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THE SUITEソムリエ 鈴木 昌武
皆さん、こんにちは。チックグループ完全会員制プライベートサロン「THE SUITE」ソムリエの鈴木です。
前回、フランスワインの女王と言われるボルドーの右岸、左岸それぞれにおける特徴や主要品種などを解説させていただきましたが、今回は“右岸”の代表的な産地サンテミリオンとポムロールをご紹介。
まずは、世界遺産にも登録されている美しい中世の街並みが残るサン・テミリオン。
この地域では、主にメルローとカベルネ・フランがブレンドされ、ワインが造られています。
比較的大きな地域ですが、大きく分けると砂利質土壌のグラーヴエリアと、台地エリアのプラトーエリアの二つに分けられます。
グラーヴエリアでは砂礫質に向いたカベルネ・フランやカベルネ・ソーヴィニヨンが多く栽培されていて、右岸の中でも独特なスタイルのワインを生産しています。「シャトー・シュヴァル・ブラン」がこのエリアを代表する有名ワインです。
一方、台地であるプラトーエリアでは、粘土石灰質土壌から優美な味わいのメルロ主体のワインが造られています。サン・テミリオンを代表する「シャトー・オーゾンヌ」が代表銘柄。
9つの村から成るこの地域のブドウ耕作面積は5500haと広大で、土壌も多種多様で、それに相まってAOCサン・テミリオン・グラン・クリュ、プルミエ・グランクリュ・クラッセ、グラン・クリュ・クラッセなど名称・呼称が多く、さらに格付けは10年ごとに改正されるなど、まさにワイン初心者泣かせのアペラシオンとも言われますが、しかしながらその味わいは肉づき良くまろやかで、外交的なものが多いとっつきやすいワインです。
もう少しだけ具体的に解説すると、畑によって風味が微妙に異なるものの、ボルドーワインでありながらブルゴーニュにも共通する木苺の香りがあり、豊かなコクとまろやかさ、色調は紫味がほぼなく、タンニンは穏やかなワインが多いです。
AOCサン・テミリオンは、シャトーの密集ぶりにあって、中小のシャトーが群がっているため、ワインの選択肢は多く、ラベルの表示も混乱しやすく、同一地域の中に、さらに良質とされるAOCサン・テミリオン・グラン・クリュという別のAOCもあったりなどなど、格付けを語りはじめると一晩かかっても話しきれない複雑さや歴史のある地域ですが、「サンテミリオン」=「こくウマのワイン」のイメージで、ステーキ肉などとのペアリングが王道。
特に仔羊の程よく脂に乗った味わいと独特の風味が、サンテミリオンの柔らかな味わいと調和します。
「仔牛のロースト」は、フルーツソースで頂くことで、メルローの果実味との相性がより良いものとなります。
牛の赤身肉や牛タンなどの噛み応えのある「肉の煮込み」、「ランプロア・ア・ラ・ボルドレーズ(ウナギの赤ワイン煮込み)」も定番
ですが、日本で定番の「ウナギの蒲焼」も甘辛いタレがメルローの果実味と風味がマッチします。
チーズと合わせる場合は、カマンベールやブリーなどのクリーミーで豊かな白カビチーズと非常に合います。
チーズのコクとワインのフルーティさが相互に引き立てられ、素晴らしいペアリングを生み出します。
「サン・テミリオン」を見かけましたら、気軽にオーダーして楽しんでください!