『緑の州』~イタリア紀行9~
Le Club de Tokyo ソムリエ 泉澤 進也
こんにちは。『ル・クラブ・ドゥ・トウキョウ』ソムリエの泉澤です。
今回は長めの休みが取れたときに南イタリアへ旅行した時の話です。
まずは、飛行機で「ヨーロッパ緑の州」の異名を持つアブルッツォ州へ。
海も山もどちらもある州で、頑張れば山で遊んだあとに海水浴も楽しめます。
空港からペスカーラ中央駅まではすぐで、ここからローマ方面へも行けます。
かなり綺麗な駅で、駅前の道も広く整備されていて夜でも明るかった印象があります。
近くにはカジュアルなシーフードレストランがたくさんありますが、イタリア人と一緒なので寿司屋に行くことになりました。
創作巻き寿司?味は悪くないのですが、真っ赤なナンカ、真っ黒なナンカなどのっていて見た目はかなり異様。
他の外国人のお客さんも慣れないながらも頑張って箸で食べていたのが印象です。(笑)
他には辛い味付けの料理や、アロスティーニという羊の串焼き、羊のチーズ、ギターと呼ばれるキタッラというパスタやポルペッタという美味しいミートボールなどの名産や地元で人気の生クリームが溢れるくらいたっぷり入ったクリームパン。専門店もあるくらい人気があります。
この地方のワインとして、赤では圧倒的にモンテプルチアーノ種、白ではトレッビアーノ種が有名ですが、酸味のしっかりとしたペコリーノ種やトロピカルなパッセリーナ種もおいしいワインがあります。
アブルッツォ州のワイナリーといえば、エミディオ ぺぺ、ヴァレンティーニ、マシャレッリの3つが有名ですが、マシャレッリだけ訪問できましたのでその時の話を。
当主のジャンニ・マシャレッリ氏は、アブルッツォワインの歴史を変え、世界に広めた革新家。そのジャンニ氏からたくさんの話を聞かせてもらい、ワインと食事もたくさん頂いてとても楽しかった思い出です。
おじから譲り受けた2haのブドウ畑から始め、借金をして60haまで大きくしたと。「当時は土地が安かったから」って穏やかな笑顔で話してくれました。
今では400haの畑から2万本のワインを造るまでに成長し、モンテプルチアーノというブドウから造られるモンテプルチアーノ・ダブルッツォを世界的な認知度まで上げた功労者としても認められています。
その時もボルドー赤ワインと自分の造るワインをブラインドテイスティングで「こっちの方がうまいだろ!」って自慢気に嬉しそうにしていたのが印象的でした。
甘みのある黒ブドウの香りの中に少しスパイシーさが混じっていて、重厚感とコクのあるフルボディですが飲み心地はさっぱりしていて、まるで紅茶のような渋みがある素晴らしいワインでした。
いつか再会できることを楽しみにしていましたが、2008年、52才の若さでこの世を去ってしまったのがただただ残念です。
ペスカーラには観光も楽しめる場所があり、私が行った時にはまだ作られる前でしたが、ポンテデルマーレ。
ヨーロッパでも注目をあびるほどの歩行者用の橋でユニークな形で人気があり、散歩しながら見る景色がきれいでとてもいい場所だとか。
イタリア最大の国立公園や国立考古学博物館では貨幣のコレクションなどかありました。
特に、中世にはフィレンツェのメディチ家も領有していた断崖絶壁に佇む美しい古城ロッカスカレーニャ城は、電車では行けませんがローマからバスや車で2時間ほど。突き出た崖の上にある城で、下から見上げる雰囲気はまるでおとぎ話や宮崎駿さんの映画に出てきそうな荘厳で神秘的なお城なのでぜひ足を運んでみてください。
ジャンニ氏の強い意志や独創性に思いを馳せながら、今日は美味しいイタリアワインを飲みたいと思います。
Salute!