映画の中のワイン・第93章
六本木クラブチック ソムリエ 平野 光志
映画「土を喰らう十二ヵ月」を観ました。
監督・脚本、中江裕司。出演は、沢田研二、松たか子、檀ふみ、火野正平、奈良岡朋子、西田尚美、尾美まさのり、瀧川鯉八ほかです。
この映画を観た時、久しぶりに日本映画で感動しました。とにかく自然も人も美しい。情緒あふれる映画です。
観たのが昨年末で、この時にはまだ沢田研二が今年の2月1日に開催された第96回キネマ旬報ベスト・テンの主演男優賞を受賞することなど何も知るよしもない時でした。
(その前の毎日映画コンクールの男優主演賞も受賞しているので、2冠となります。)
観終わった時には、もしかしたら何らかの賞をもらうのではと思っていましたが、本当になりました。
さてこの映画の中では日本酒の熱燗、ビールは出てきますが、ワインは出てきません。
しかし主人公ツトム(沢田研二)の十二カ月(自然の恵みに感謝して旬を頂く)立春から芒種で流れていく姿や食事のシーンが素敵です。
そして啓蟄(生き物が目覚める)、清明(万物が春を謳歌する)、小満(生命が満ち満ちる)、芒種(雨霞の恵みをうける)と続いていきますが、その中でも小満の時に出てくる新たけのこ炊は、ツトムと真知子ができたての一瞬にかぶりついているシーンは本当に美味しそうで、思わずゴクリと唾を飲み込んだほどでした。
そして、このたけのこにお酒は何がいいだろうと考え、やはり熱燗は最高だと思いながら、もしワインに合わせるとしたら何だろうと考え、日本のワイン甲州ではなかろうか、いや、こんな肉厚なたけのこをクリーミーなムルソー・プルミエ・クリュでも合うんだろうなと思ってみていました。
今はこれを書きながら早くも今日はたけのことワインのマリアージュを考えて食べたいという自分がいます。
たけのこブラボー!!(笑)