「新年を祝うワイン」
ザ・スイートソムリエ 木村 仁彦
皆さん、こんにちは。六本木“THE SUITE”でソムリエをしている木村です。
旧年中は格別のお引き立てを賜り誠にありがとうございました。本年も変わらぬご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。
新年を祝う際に飲むワイン。おそらく、シャンパーニュが頭に思い浮かぶと思います。
または、すでに多くの方がシャンパーニュで乾杯を済まされていることでしょう。
シャンパーニュは皆さまご存じの通り、ワインに炭酸ガスが溶け込んだ発泡性のワインです。
長い時間をかけて造られたワインは美しい黄金色を呈し、細かく立ち上がる小さな気泡が優雅な時を与えてくれます。
「複雑で華やかな香りと味」を纏うシャンパーニュは、視覚や味覚はもちろん、「音」によって、聴覚を通じても感情に訴えかけてくれています。
シャンパーニュとは五感に触れるワインなんですね。
シャンパーニュの「音」といえば、結婚式やお誕生日、イベント時などには、ポンッ!と音を立てて抜栓する印象があります。フォーマルな場や飲食店ではこのような音を出してしまった時は「失礼いたしました」とお詫びを言わねばなりません。
ですからソムリエはかなり真剣な表情で抜栓に挑みます。
そして、その際の「プシュ~」と静かに抜ける音をフランスでは「淑女のため息」と呼びます。
このアンニュイな表現がとても好きです。
グラスに注ぎ終わった直後には、パチパチという泡がはじける小さな音が聞こえます。
これは「天使の拍手」と言われ、実はシャンパーニュによって密かに祝福されています。
また、乾杯の時にグラス同士を豪快にぶつけて、カチンと合わせるのはNGなのでご注意を。
フォーマルな場や高級店で使用される薄く繊細にできているシャンパーニュグラスやワイングラスは、勢いよくぶつけるとひびは入ってしまったり、割れてしまい、ゲストや周りの雰囲気を壊してしまいます。
お祝いの席やおめでたい席で「割れる」「ひびが入る」などはもってのほかです。
正しくは、グラスを自分の首あたりまで持ち上げ、相手の目をみて「乾杯!」
その場のノリでどうしてもグラスを合わせなければいけないシーンでは、せめて割れやすい飲み口を避けて、グラスを少しだけ傾けて側面をそっと合わせてください。
時と場合によってその場に合った乾杯方法をとることで紳士の腕が試されます!
シャンパーニュ地方では、シャンパーニュの泡には幸せが込められていると言われ、グラスに注がれて下から上に持続する泡が長い幸せを表しているそうです。
素敵なキャストとシャンパーニュを堪能し、新年を祝いながら星のように輝く幸せを共有してみてはいかがでしょうか。