ピュリニー・モンラッシェとシャサーニュ・モンラッシェ（後編）

前回、ピュリニー・モンラッシェについて述べましたが、一方のシャサーニュ・モンラッシェは、初めはローマ人が開墾し、中世になってベネディクト派やクリュー派などの修道士がさらに開墾、再植を進めたことで名声を上げましたが、一方でブルゴーニュ大公国とフランス王国の争いの場ともなり、フランス軍によって集落が焼き討ちに合った歴史もあります。

その後、現在の教会を中心に町が再興され、村の名称も1879年にそれまでの「シャサーニュ・ル・オー」から、著名な畑モンラッシェを冠したシャサーニュ・モンラッシェへと改名されました。

地形は村の北部に西へ向かって大きく切り込む背斜谷があり、谷底を縫う道は、現在パリとマルセイユを結ぶ国道6号線となっています。

畑は南西を向いているものが多く、石灰岩で形成された母岩は石灰質と粘土質、そして酸化鉄を豊富に含んだ泥土の堆積物で覆われています。
表土に散らばる小石は輻射熱の効果があり、水はけもいいです。

シャサーニュは白ワインのイメージが強いのですが、村名とプルミエ・クリュは、どの畑でも赤白とも生産が可能で、実際の栽培面積も白が約65％、赤が約35％と意外に赤が多いです。
ただ、市場でシャサーニュ・モンラッシェの赤をあまり見かけないのは、村名ワインをコート・ド・ボーヌ・ヴィラージュに格下げされている事が多いためです。

主要なプルミエ・クリュは、「ラ・ブドリオット」「クロ・サン・ジャン」「モルジョ」「カイユレ」「グランド・リュショット」などがあり、特にクロ・サン・ジャンは、近年では白の栽培が増えていますが、粘土質の強い土壌で、シャサーニュで最も赤ワインに向いた土壌と言われ、19世紀にはクロ・ド・ヴージョと同等で市場で取引されていました。

私も20年以上前にドメーヌ・ラモネのクロ・サン・ジャンの赤を飲んだ時は驚いたのを今でも記憶しています。

香りはサクランボの種やグリオット、キイチゴキルシュを思わせます。熟成後はアニマル香やスパイシーなブーケが出ます。

ピュリニーとシャサーニュの違いを私の中では、白ならピュリニー、赤ならシャサーニュと思っていますが、これはあくまでも先ほどの経験も踏まえた私の感想ですので、“今日、誰と、どのようなシチュエーションで飲みたいか”、それは自分自身に合った飲み方で楽しんでもらえれば良いと思います。
バッカスも見てますしね。（笑）