“コス”の名を冠した希少ワイン
銀座クラブチックソムリエ 鈴木 昌武
フランス、メドックのサン・テステフ村にある格付け第2級の中でも、その高い品質で1級に匹敵する高い品質を保つ「スーパーセカンド」と呼ばれているワインの一つであり、そのスーパーセカンドの中でも最も1級に近い銘柄のひとつが、『シャトー・コス・デストゥルネル』です。
シャトー・ラフィット・ロートシルトを見下ろす丘の背に畑があり、ラベルに描かれている印象的な建物は、このシャトーにある仏塔(パゴダ)です。
「コス」はガスコーニュ地方の言葉で「小石の丘」。「トゥルネル」はこのシャトーを有名にした人物ルイ・ガスパール・デストゥルネルに由来しています。
多くのワインファンに“コス”の呼び名で親しまれ、通のワインファンの間で人気の高いサンテステフの中でも評価の高いシャトーです。
冬は比較的温暖で、夏は熱波を受けにくい、ぶどう栽培に理想的な土地で、シャトーを駆け抜ける風があり、湿気を防いで健全な状態でぶどうは栽培されます。
そして、土壌は砂利質と粘土質両方の良さが特徴ですが、2001年の調査研究で、細かく20種類もの土壌が入り組んでいる理想的な土地であることも分かっています。
その調査結果により、栽培に適した土壌と日照条件に応じたぶどう品種が樹齢も考慮されて植えられ、「メドック最高の白ワインを造る」というコンセプトのもと2005年にシャトー・コス・デストゥルネル・ブランが初リリースされました。
ワイン作りに多大なる情熱を持っているこのシャトーは、最先端の施設が備えられていて、特に2000年以降は、ワイン造りの研究と分析に多大な投資をしています。
2003年より、ステンレスタンクでの一次発酵を行い、温度を制御管理することで、より正確なワイン作りに取り組むなど、伝統的な樽発酵を行うワイン造りに一石投じました。
また、通常のワイン造りでは、果汁はポンプで樽から樽へと運ばれますが、このシャトーでは重力を生かした醸造プロセスを用いて、ぶどう果汁はポンピングされることなく穏やかに運ばれていくグラヴィティシステムによるナチュラルフローを採用し、無理な力がかからない、自然で穏やかなワイン造りを目指しています。
最先端の技術を生かしながら伝統的なワイン作りをすることは、このシャトーを有名にしたルイ・ガスパール・デストゥルネルの意思を反映させた大胆で技術的に高いものを求め続けた彼への尊敬を表したものとも言えます。
ソーヴィニヨン・ブランをメインにセミヨンがブレンドされた白は、ヴィンテージから3年以内は、フレッシュで香り高い果物や花の香りを楽しむことができ、それ以降は、丸みを帯びた深さを楽しむことができる奥深いワインです。
2015年ヴィンテージは、切れ味鋭く、パワフル、すべての要素の力強さや個性を持ち、二つの品種がそれぞれの品種の個性を存分に表現しつつも、互いに邪魔することなくハーモニーを成している素晴らしいワインとなっています。
淡い麦わら色調、グレープフルーツなどの柑橘系の香りの中にブリオッシュの香りが溶け合い、新鮮できれいな酸とのバランスが、上品で優雅な雰囲気を持たせ、甘味のある果実の風味とミネラル感がソフトで優しい口当たりを感じさせてくれます。
卓越したクオリティを持ち、メドック最高峰の白と呼ばれ、生産量の少なさから入手困難な逸品とされる『幻のコス』、シャトー・コス・デストゥルネル・ブランをぜひクラブチックでお楽しみ下さい!