ワインの雑学「ワインはレーダーの原料?」
銀座クラブチック
ソムリエ 鈴木 昌武
皆さんこんにちは。銀座クラブチック、ソムリエの鈴木です。
最近では、イタリアン、フレンチ、スパニッシュなどのお店はもちろんのこと、寿司屋などの和食のお店から居酒屋まで、すっかり日本人の生活に定着した感のあるワインですが、ワインの話題は詳しい人とそうでない人にかなりの温度差が生じることも。。。
今回は、ワインに詳しくなくても、楽しくワインと会話を楽しめて、誰かに話したくなるような雑学です。
戦時中は酒類の製造に規制が設けられることが多いですが、第二次大戦中の日本において、ワイン造りだけは奨励されていました。
その理由として、ワインの液中やワインの搾り粕に存在する“酒石酸”にあります。
そして、ワイン中に沈殿する滓(おり)や貯蔵する樽にも白い小さな結晶ができます。
この滓や周壁の酒石酸が粗酒石(そしゅせき)で、採取したものに加里ソーダを化合させると、酒石酸加里ソーダという少し大きな結晶体になります。
これがロッシェル塩と呼ばれるもので、第二次大戦ではドイツがいち早くこれを採用して音波防御レーダーを開発、艦船に装備して、潜水艦や魚雷に対処する兵器として効果を発揮していました。
このロッシェル塩の特徴は「音波をすばやく捉える特性がある」、「小さい電力で駆動できる」ことで、ひと昔前までは、電源を持たない鉱石ラジオや防災用ラジオ、レコードプレーヤーのカートリッジ、マイクや一部のイヤホンなどにも使われていました。
日本の海軍は昭和17年のミッドウェー海戦で、航空母艦4隻を失う大打撃を受けた直後、同盟国のドイツに兵員を派遣し、ロッシェル塩を利用した探査技術を習得させ、対潜水艦用の水中聴音機の量産態勢を取り、艦艇の戦備を強化する方策を取ります。
そして、山梨県のワイン工場を軍の管理下に置いて、ワイン工場は“酒石酸採取工場”と名前を変えて、レーダーの材料として利用するためにワイン造りを推奨しました。
昭和19年度の果実酒の課税石数は、約1300万リットルですが、この方策により、ワイン造りの製造免許数を増やしたり、造石数の増量を容認、当時のワイン造りに必需な砂糖についても、最重要な統制品であるにもかかわらず、割当や配給の面で特別に便宜を与えた結果、翌年の昭和20年度には、約3400万リットルとなりますが、終戦に伴い、緊急軍需物資としての酒石酸はその役割を終えることになります。
思わず驚いてしまうような話ですね!
皆さんにもワインを飲む時には、、“つまみ”話でワイワイと盛り上がって楽しんで頂けたら幸いです。
でも、くれぐれも語り過ぎないようにご注意を!(笑)